ネット上の情報では「消防設備点検は消防法第17条の3の3によって半年ごとの定期点検と消防署への報告が法的に義務付けられているため、絶対に需要がなくならない不滅の職業」ともてはやされる傾向があります。しかし、この言説には重大な盲点が存在します。
確かに消防設備士将来性と需要というマクロな視点で見れば、建物が存在し続ける限り点検の仕事自体が消滅することはありません。しかし、「需要が消えないこと」と「そこで働く作業員が豊かな生活を送れること」は同義ではないという冷徹な現実を直視する必要があります。
少子高齢化と人口減少が進む日本では、地方都市を中心に空きビルや老朽化マンションが増加し、修繕積立金の枯渇が社会問題化しています。管理組合や中小ビルオーナーは、義務付けられた法定点検の費用を1円でも削ろうと相見積もりを繰り返します。結果として点検会社間の値下げ競争が激化し、一人あたりの巡回件数を増やさなければ会社が維持できない「薄利多売モデル」へと拍車がかかっています。
さらに近年では、AIを活用した自立試験機能付き感知器の普及や、遠隔監視システムの導入により、現場作業員の員数を削減する実証実験も進められています。「法で守られた資格だから安泰」と高をくくり、ただ言われた通りに点検棒を振るだけの作業員であり続ければ、労働環境の悪化と賃金停滞の波に飲み込まれていくことは避けられません。