サイドウォールにえぐれ傷を発見した際、多くのドライバーが最も知りたいのは「このまま車を走らせて大丈夫なのか」という点です。結論から述べると、タイヤサイドウォール傷の深さと「カーカスコードの露出有無」が走行可否を分ける絶対的な境界線となります。
乗用車用ラジアルタイヤの側面は、路面と接地するトレッド面とは全く異なる構造で作られています。路面からの衝撃を柔軟にいなすため、ゴムの厚みは乗用車でおよそ5ミリから9ミリ前後しかありません。この薄いゴム層のすぐ内側には、タイヤの骨格であり空気圧を保持するための重要部材である「カーカス(ポリエステルやナイロンのコード層)」が張り巡らされています。
えぐれた傷口を覗き込んだ際、以下の2パターンのどちらに該当するかで対応は180度変わります。
第1に、コード露出とバースト危険性が直結する危険水域のケースです。傷口の中に「白い糸のような繊維」や「金属状のコード材」が少しでも視認できる場合、タイヤの耐圧構造はすでに破綻しています。タイヤ内部には通常200〜250kPaという極めて高い空気圧が掛かっており、骨格を失ったゴムは内圧に耐え切れません。この状態で走行を続けると、遠心力と摩擦熱が加わった瞬間に傷口が一気に裂け、一瞬で空気が抜ける破滅的なバーストを引き起こします。そのため、タイヤえぐれ走行可能かという問いに対する答えは、コード露出が確認された時点で「自走不可・即時交換」となります。
第2に、削れた深さが1ミリ前後のごく表層にとどまり、傷口の奥を見ても黒いゴムしか見えないケースです。この場合、直ちに空気が漏れ出す可能性は低いものの、決して安全が保証されたわけではありません。タイヤは走行中、1分間に数百回もの周期で押し潰されては復元する「たわみ運動」を繰り返します。傷の角を起点にして亀裂が内部へと進行していく「クラック進展」のリスクが常に付きまとうため、表層の傷であっても専門知識を持つプロによる目視・触診点検が欠かせません。