「水着を洗濯機でガラガラ洗ったら、1回で生地が波打つように伸びてしまった」「お尻や太もものあたりが薄くなり、白く粉を吹いたようになった」――SNSのコミュニティや知恵袋には、夏が終わるたびにこうした悲痛な声が溢れかえります。大手スポーツウェアメーカーや繊維製品品質管理士の調査データによると、水着の寿命が1シーズン未満で尽きてしまう原因の約78%が不適切な洗濯と保管に起因しています。
水着のしなやかな伸縮性を支えているのは、ポリウレタン(スパンデックス)と呼ばれる弾性繊維です。この繊維はゴムのように伸び縮みする優れた特性を備えているものの、分子構造上、熱・酸・アルカリ・酸化剤に極めて弱いという決定的な弱点を抱えています。一般的な家庭用全自動洗濯機で標準コースを選んでしまうと、以下の3重苦が同時に襲いかかります。
- 強力な水流と遠心力による繊維の引き裂き:激しい水流や他の衣類との絡み合いにより、ポリウレタンの微細な繊維が物理的に切断され、キックバック(伸縮復元力)が消失します。
- 弱アルカリ性洗剤の界面活性剤アタック:普段の洗濯に多用される弱アルカリ性のメイン洗剤は、皮脂や泥汚れを強力に落とす反面、デリケートな化学繊維を急激に傷めます。
- 摩擦熱による繊維の変形:パットやワイヤー、金属パーツが生地と激しく擦れ合い、摩擦熱で繊維が溶融・硬化するケースも後を絶ちません。
さらに見過ごせないのが水着に漂白剤がNGとされる理由です。「プールの雑菌が気になるから」「白地の水着のくすみを消したいから」と塩素系漂白剤や強力な酸素系漂白剤を投入すると、主成分である次亜塩素酸ナトリウムなどがポリウレタンの結合構造を瞬時に破壊します。結果として生地の弾力が完全に失われ、ゴムがドロドロに溶け出したり、逆にパキパキに硬化して修復不能に陥ります。
もしどうしても洗濯機を使用する場合は、水着を裏返してカップを外し、型崩れを防ぐクッション性のある目の細かい洗濯ネットへ1着ずつ入れ、「手洗いコース」や「ドライコース」などの弱水流設定を厳守しなければなりません。しかし、本来の風合いを数年単位で保ちたいのであれば、後述する手洗いが圧倒的に推奨されます。