この奇怪な植物が西洋科学の表舞台に登場したのは、19世紀後半のことだ。1878年、イタリアの探検家であり植物学者であったオドアルド・ベッカッリが、インドネシアのスマトラ熱帯雨林の奥深くで発見した。鬱蒼としたジャングルの中に突如として現れた、成人男性の背丈を遥かに超える巨大な「怪物」に、ベッカッリは言葉を失ったという。地元住民からは「ブンガ・バンカイ(死体花)」と呼ばれ、畏怖の対象となっていた。
ベッカッリが持ち帰った種子はヨーロッパへ渡り、学名「アモルフォファルス・ティタヌム(Amorphophallus titanum)」と名付けられた。スマトラ熱帯雨林特有の高温多湿な環境、限られた日照、そして鬱蒼とした下層植生という過酷な条件下で、種を存続させるために選んだ形態こそが、あの圧倒的なスケールと強烈な臭気だったのだ。