新生児科医や小児科医がダウン症を疑う際、決して単一の「顔つき」だけで判断を下すことはありません。新生児期はむくみも強く、健康な赤ちゃんでも親の遺伝によって目が細かったり鼻が低かったりすることが日常的だからです。医師は、国際的にも用いられる「Hall(ホール)の基準」などをベースに、以下のような21トリソミー新生児の身体的所見一覧を総合的にスコアリングしながら鑑別を進めます。
診察室で小児科医が重点的にチェックする代表的な所見には、次のような項目があります。
第一に、新生児ダウン症の特徴と顔つきです。後頭部の平坦化、眼角開大(目と目の間が離れている)、眼裂斜開(目尻が上がっている)、鼻根部の平坦さ(鼻が低く平ら)、耳介低位(耳の付いている位置が低く、上部が折れ曲がっている)、頸部の皮膚の余剰(首の後ろのたるみ)などが観察されます。
第二に、極めて重要な臨床指標となるのが新生児の筋緊張低下と哺乳障害の詳細まとめに見られる運動機能のサインです。ダウン症の新生児は「フロッピーインファント(ぐにゃぐにゃした乳児)」と呼ばれる独特の筋緊張低下を示します。抱き上げた際に両腕や両足がだらりと下垂し、頭部を支える力が非常に弱い状態です。この筋力低下は口腔周囲の筋肉にも及ぶため、乳頭に吸い付く力(吸啜反射)が弱く、1回の授乳に40分以上かかったり、途中で疲れて寝てしまったりする哺乳困難が初期段階から頻発します。
第三に、手足の微細な骨格・皮膚の所見です。代表的なものがダウン症の手相(猿線)と足の指の特徴です。手のひらを横に一本の線がまっすぐ貫く「手掌単一屈曲線(猿線/サル線)」は、一般人でも数%に見られますが、ダウン症児では約半数に認められます。さらに、足の親指(第1趾)と人差し指(第2趾)の間が広く開いている「サンダルギャップ(足趾間離開)」も、臨床上見逃せない判断材料となります。
これらに加え、聴診器による心雑音の確認(心室中隔欠損症や房室中隔欠損症などの先天性心疾患の合併率は約50%)や、原始反射(モロー反射)の減弱などが複合的に認められた場合、医師は確定診断のための検査へ進む判断を下します。