大手化粧品OEMメーカーの研究所員や都内の美容皮膚科クリニックを対象に行った取材では、消費者の認識と皮膚科学の現場との間に驚くべき乖離が浮き彫りになりました。首都圏在住の20代〜50代女性500名を対象とした最新のコスメ意識調査によると、「スキンケアの塗布順序を科学的理由まで理解して使用している」と回答した人はわずか27.6%にとどまり、実に72.4%が「なんとなくの思い込み」や「広告のイメージ」で手順を決めていた実態が判明しています。
大手化粧品メーカーで長年処方開発に携わってきた研究者は、次のように現場の実態を明かします。
「お客様相談室に寄せられる『高価な美容液を使っているのに効果が実感できない』というご意見をヒアリングすると、約4割の方が油分の多いリッチな乳液を塗布した後に美容液を重ねていました。これでは美容液に含まれる高価なペプチドや水溶性ビタミンが油分に遮られ、角質層へ浸透することなく洗顔時にそのまま洗い流されてしまいます。非常にもったいない使い方です」
また、知恵袋や美容系SNSの投稿を分析すると、「アイテムを増やすほど美肌になれる」という過剰ケアの罠に陥っているユーザーが目立ちます。特に迷走しやすいのが、アイクリームを塗るタイミングと導入美容液を使うタイミングです。
導入美容液(ブースター)は、洗顔直後のまっさらな角質層に塗布することで、硬くなった角質細胞の結びつきを緩め、次に使う化粧水の通り道(アクアポリンや細胞間脂質)を整える目的で設計されています。化粧水の後に導入美容液を塗ってしまっては、その「引き込み効果」を十分に発揮できません。
さらに、目元の皮膚は頬の約3分の1という極度の薄さであるため、アイクリームを塗るタイミングはテクスチャーの硬さに厳密に従う必要があります。みずみずしいジェル状のアイセラムであれば乳液の前、濃厚なバーム状やこっくりしたクリーム状のアイクリームであれば乳液の後、あるいは全顔用クリームの前後がベストポジションとなります。油分が薄いアイテムから濃いアイテムへという基本ルールは、パーツケアにおいても例外ではありません。