「体が燃えるように熱いのに、体温計を挟むと36度5分しかない」という現象は、医学的に決して珍しいことではありません。このギャップが生じる最大の要因は、「脳が感知している体感温度」と「実際の深部体温」のズレにあります。
人間の体温調節中枢は脳の視床下部にあり、外気温や体内の状態を瞬時に判断して、血管を拡張させたり汗をかかせたりして平熱(通常36度〜37度前後)を維持しています。しかし、強い精神的ストレスや睡眠不足、極端な寒暖差に晒されると、この視床下部のコントロール機能が誤作動を起こします。その結果、深部体温自体は上昇していないにもかかわらず、皮膚表面の毛細血管が一気に拡張し、顔や上半身へ血液が集中して強烈な「火照り」や「熱っぽさ」として知覚されるのです。
日本自律神経学会などの医学的知見においても、交感神経が慢性的に優位な緊張状態に置かれると、末梢血管の収縮と拡張のリズムが崩れ、体幹と末梢で血流障害が生じることが指摘されています。手足は氷のように冷えているのに顔面だけがカッカと熱い「冷えのぼせ」もこの典型例であり、平熱でありながら熱っぽさに苦しむ身体的メカニズムの核心といえます。