SNS上では、「台風の中心が東海上に逸れる予報だから今回は大したことない」「上陸しないなら傘さえあれば大丈夫」といった安易な楽観論がしばしば散見されます。しかし、気象のプロが最も警戒を促すのは、まさにこの「直撃ではない通過ルート」に潜む複合被害です。
第1の盲点は、台風本体と秋雨前線・気圧の谷の相互作用です。台風が遠く離れた海上に位置していても、台風が送り込む莫大な暖湿気流が本州付近に停滞する前線を激しく刺激します。その結果、台風の接近前あるいは通過と同時に、数百キロ離れた内陸部や北日本・東日本で「線状降水帯」が形成され、想定外の内水氾濫や土砂崩落を引き起こすケースが後を絶ちません。
第2の盲点は、海岸線における「うねり」と「高潮」の時間差です。台風22号の強風域で発生した巨大な波は、長周期の「土用波」のようなうねりとなって数千キロ離れた太平洋沿岸へ数日前から押し寄せます。天候が曇り程度であっても波浪警報が発令されることがあり、海へのレジャーや防波堤への立ち入りは命に直結する危険を伴います。「予報円の外側だから安全」という解釈は、気象学的に根本的な誤りです。