野菜の素揚げにおいて最も視覚的な差が出るのが「なすの仕上がり」です。家庭で作ると黒褐色に濁ってしまいがちですが、これには科学的な明確な理由があります。
なすの美しい紫色は「ナスニン」と呼ばれる水溶性のアントシアニン系色素によるものです。ナスニンは高温に触れると分解しやすく、また空気中の酸素に触れるとポリフェノールオキシダーゼという酸化酵素の働きで急速に退色します。なすの素揚げにおける色止めの真相は、「180℃以上の高温で酸化酵素を一瞬で熱失活させ、油の皮膜で酸素を遮断すること」にあります。
具体的な手順としては、なすを切ったら水にさらさず、ペーパーで断面を拭き、皮目に格子状の細かな隠し包丁を入れます。そして投入時は必ず「皮面を下」にして油に入れ、箸で完全に油の中へ数秒間沈め込みます。この最初のアクションにより、鮮やかな紫色が油の皮膜内に固定され、料亭のような艶やかな発色が保たれます。
また、現代の家庭環境では、たっぷりの揚げ油を用意するのが億劫なケースも少なくありません。そこで推奨されるのが、フライパンで作る少量の素揚げです。油の深さはわずか1〜2cmで十分機能します。
フライパン素揚げを成功させる技術的ポイントは「傾け」と「油かけ」です。食材を入れたらフライパンを少し手前に傾け、油の深さを局所的に確保します。さらにスプーンやお玉で野菜の露出した上面に熱い油を回しかけることで、対流熱と同じ環境を擬似的に作り出します。底面と上面に同時に熱が入るため、少ない油でもムラなく均一にクリスピーな焼き上がりが実現します。