「黒猫がペットショップに置かれないのは、不気味だから売れ残るからだ」という言説は、ペット流通の現場を知らない人々による完全な誤解です。大手ペットショップチェーンの仕入れ担当者や繁殖現場のデータをつなぎ合わせると、黒猫がペットショップにいない理由はきわめて明快な商構造に集約されます。
第1の決定的な要因は、ペットショップで雑種を扱わない理由に直結しています。全国展開するペットショップの店頭に並ぶ子猫のほぼ100%は、国内の「ペットプラス」「コジマ」などに代表される流通網、あるいは全国に十数カ所存在する生体オークション(競り市)を経由して仕入れられます。この競り市に出陳するための絶対条件が、CFAやTICA、国内の血統書発行団体による「純血種の血統証明書」の存在です。法的な血統の裏付けがない雑種(ミックス猫)は、オークションの規約上、競りにかけることすらできません。
第2に、私たちが街角や野良猫で見かける黒猫の圧倒的多数は、何代にもわたって自然交配を繰り返してきた日本猫由来の雑種です。つまり、世の中に存在する黒猫の大半は、そもそもペットショップの仕入れルートに流通し得ないカテゴリーに属しています。
第3に、ペット業界の流通事情における需要と価格設定の問題が挙げられます。オークションにおいて数多のバイヤーが入札するのは、毛色が華やかで一般消費者の目を引きやすいシルバータビー、キャリコ(三毛)、ポイントカラーなどの品種です。ブラックの単色(ソリッドブラック)は、後述する純血種の中でも出産頭数が極端に少なく、ペットショップ側が「黒猫の子猫を仕入れたい」と探しても、市場に流通するタマ自体が存在しないというのが流通のリアルな現場です。