道内で「数年前はほとんど見かけなかったのに、急激に街中がマイマイガだらけになった」という声を頻繁に耳にします。北海道立総合研究機構(道総研)林業試験場などの長期観測データによると、マイマイガの個体数はランダムに増減しているのではなく、およそ10年から11年の周期で急増と激減(個体群崩壊)を繰り返す規則性を持っています。
この劇的な増減サイクルを生み出している主因は、天敵と病原微生物の相互作用です。マイマイガの個体数が低密度にある時期は、寄生蜂や野鳥、クモなどの捕食圧によって数が抑えられています。しかし、気象条件(春先の温暖な天候による幼虫生存率の上昇など)が合致すると爆発的な繁殖が始まります。
マイマイガが過密状態に達した大発生の2〜3年目、個体群を壊滅させる決定打となるのが「核多角体病ウイルス(NPV)」と昆虫病原糸状菌「エントモファガ・マイマイガ」の蔓延です。過密によって幼虫同士の接触頻度が高まると、ウイルス感染が瞬く間に広がり、幼虫は樹上で体液を溶出させながら大量死(いわゆる「溶けて死ぬ」現象)に至ります。これにより、あれほど猛威を振るったマイマイガが翌年には嘘のように姿を消すという劇的な終息を迎えます。
さらに北海道特有の環境要因として「積雪」が挙げられます。卵塊が厚い雪の下に埋もれることで、真冬の極度の氷点下(マイナス20度以下)や乾燥から守られ、越冬卵の生存率が他地域よりも高まる点も、道内各地で大規模な発生が起きやすい理由の一つです。