『歳末特別警戒スペシャル』を鑑賞する上で、長年のマニアと初見のライト層の間でしばしば熱い議論が交わされるのが「地上波放送版(約115分)」とパッケージ版等に収録された「完全版(約141分)」の仕様差です。
1997年12月30日の初回放送時、番組は2時間枠の限られた放送枠に収めるため、緻密に練り上げられたエピソードの多くが断腸の思いでカットされました。後にリリースされたDVDやブルーレイに収められた完全版では、本編に約20分以上におよぶ未公開フッテージが再統合されています。単なる尺の延長ではなく、本編の味わいを別次元に引き上げる重要なピースが散りばめられている点が特徴です。
具体的には、湾岸署内の各課(交通課、生活安全課、警務課など)が年末の異常な慌ただしさの中で見せる群像劇のディテールや、いかりや長介演じる和久平八郎と織田裕二演じる青島俊作が交わす滋味深い会話のニュアンス、さらには署内で巻き起こる細かいサブプロットが大幅に肉付けされています。本筋の事件解決だけを追うのであれば放送版のテンポ感も秀逸ですが、脚本家・君塚良一が意図した「警察という巨大組織の底辺で働くサラリーマンたちの悲喜こもごも」を隅々まで噛み締めるならば、完全版の視聴こそが推奨されます。
注意すべきは、ストリーミング配信のFODプレミアム等で提供されているソースが、基本的に地上波放送フォーマットをベースにしたマスターである点です。未公開シーンまで余すところなく踏破したい本格派のファンは、TSUTAYA DISCAS等の宅配レンタルを利用して「完全版DVD」を取り寄せるのが、作品の真価を余すところなく味わい尽くすための賢明な選択となります。