本作におけるグロテスク描写の凄まじさは、単に「血が出る」「敵を斬る」といったアクションの範疇を大きく逸脱しています。主人公・デンジがチェンソーの悪魔へと変身し、敵を切り刻むシーンでは、肉が裂ける音や内臓の散乱が克明に描写され、アニメ版でもMAPPAによる徹底した写実的作画と生々しいSE(効果音)によって、閲覧注意レベルの生々しさへと昇華されました。
さらに読者に強い不快感と恐怖を植え付けるのが、登場する悪魔たちの異形デザインです。一般的なモンスターのような格好良さは排され、以下のような人間の深層心理を抉るビジュアルが採用されています。
- 闇の悪魔:両断された宇宙飛行士が合掌して並ぶ絶望的な空間演出と、関節が異様な方向に折れ曲がった人肉の集合体。
- 人形の悪魔(サンタクロース):無数の人間の手足や首が継ぎ接ぎされた、人体の冒涜とも言えるおぞましいフォルム。
- 落下の悪魔:首のない皿回しのような不気味な給仕服姿で、人間の精神的トラウマを物理的な重力異常として顕現させる狂気。
藤本タツキ氏が提示する悪魔デザインは、生物学的なキメラというよりも「人間の根源的な死と狂気の概念化」であり、視界に入った瞬間に脳が警告を発するような生理的嫌悪感をダイレクトに刺激します。