健康診断で行われる胸部レントゲン検査は、X線を背中から胸に向けて照射し、体内を透過した線量の差を白黒の濃淡画像としてフィルムやモニターに投影する仕組みです。空気で満たされている正常な肺はX線をよく通すため「黒色」に写りますが、骨や心臓、血液、水、濃密な組織はX線を遮るため「白色」に写し出されます。
つまり、本来は黒く抜けて写るべき肺野(はいや)の一部に何らかの濃い組織が存在すると、周囲とのコントラストによって「白い影」として浮かび上がります。これが健康診断の判定でいわゆる「肺の影」と呼ばれる状態です。
肺に白い影が現れる要因は多岐にわたり、決して悪性腫瘍(がん)だけに限られません。主な原因組織としては以下のようなものが挙げられます。
- 過去の感染症による瘢痕(傷跡):以前かかった肺炎、肺結核、マイコプラズマ肺炎などが治癒した後に残った硬い組織。
- 活動性の炎症・感染症:現在進行形の肺炎、非結核性抗酸菌症、真菌症など。
- 良性腫瘍・嚢胞:過誤腫(かごしゅ)や血管腫、空気や液体がたまった袋状の病変。
- 骨や血管の重なり:撮影時のポジショニングや体格により、肋骨・鎖骨の交差部や血管の合流部が濃く写ってしまったもの。
- 悪性腫瘍:原発性肺がん、または他臓器から転移してきた転移性肺がん。
このように、レントゲンはあくまで「広範囲を素早くスクリーニングする」ための平面写真であり、何かが重なって写っただけでも異常判定が出ることがあります。影が写っていること自体が直ちに重病を意味するわけではありません。