ネット上の情報には、手軽さを強調するあまり危険な誤解が紛れ込んでいます。その最たるものが「あて布は何でも代用できる」という俗説です。
綿のハンカチやタオルをあて布に使うと、タオルの織り目や毛羽が溶けたプリント面に転写され、表面がガサガサに曇ってしまいます。ここで唯一無二の威力を発揮するのが、耐熱シリコン加工が施されたクッキングシート(オーブンシート)です。耐熱温度が約250℃あるクッキングシートは熱をダイレクトに均一伝達しつつ、溶けた樹脂がアイロン底面に張り付くのを完璧に防ぎます。あて布ではなく、クッキングシートを使うことこそが仕上がりを劇的に変える分岐点です。
また、「一度貼り付けに失敗したらTシャツはもう捨てるしかない」という諦めの声も散見されますが、これも誤解です。失敗したアイロンプリントを綺麗に剥がす修正アプローチは確立されています。
不要になったプリント部分の上に再度クッキングシートを敷き、高温のアイロンを15秒ほど押し当てて樹脂を再融解させます。熱いうちにピンセットで端をつまむと、まとまって剥がすことが可能です。生地に残ったネバつきや糊の跡には、薬局で安価に入手できる無水エタノールまたは消毒用アルコールを布の裏側から染み込ませ、歯ブラシで軽く叩くように叩き出すと、繊維を傷めずに糊を溶脱させてリセットできます。