作中で最も印象的な舞台の一つが、主人公・宗介と母のリサが暮らす「崖の上の赤い屋根の家」です。鞆の浦の町並みを歩くと、山と海に挟まれた急斜面に民家が立ち並ぶ景観が随所に見られ、まさに映画のプロットそのものであることが分かります。
モデルとされる場所については諸説ありますが、宮崎監督が実際に逗留していた高台の借家や、港を見下ろす後山公園展望台からの景観、医王寺の境内へと続く坂道からの眺望が複合的に組み合わさって描かれたと分析されています。なお、監督が滞在した民家周辺は現在も一般の居住区・私有地であり、無断立ち入りや撮影は厳しく制限されています。現地の景観を愛でる際は、公道や指定展望スポットからの鑑賞にとどめる配慮が求められます。
一方、港の中心にそびえる「常夜燈(じょうやとう)」は、安政6年(1859年)に建造された高さ約10メートルの港のシンボルです。作中で宗介の父・耕一が乗る船が航行する港湾風景や、町全体を包み込むノスタルジックな港の空気感は、この常夜燈周辺の船着場(雁木)と見事に重なり合います。