マーク・ゴンザレスという人物の本質を知るには、彼の神話的なスケートボード経歴に触れないわけにはいきません。1968年カリフォルニア生まれの彼は、単なるアスリートではなく「ストリートスケートボードの歴史を変えたゴッドファーザー」と称されます。
1986年、サンフランシスコのエンバカデロ広場にある巨大な壁と階段を飛び越える「ゴンズ・ギャップ(Gonz Gap)」を史上初めてオーリーで成功させた瞬間、スケートボードはプールやランプで滑る競技から、街中の建造物すべてをカンバスに変える現代のストリートカルチャーへと昇華しました。その後、1989年に伝説のデッキカンパニー「Blind Skateboards」を立ち上げ、アートとスケートを融合させた唯一無二の表現手法を確立します。
そんな彼を象徴するあの黄色いエンジェルロゴの由来はどこにあるのでしょうか。ファンの間では「天使」や「鳥」と呼ばれますが、マーク自身はこのキャラクターを「Shmoo(シュムー)」と名付けています。
ある日のドローイングの最中、マークが紙に何気なく描いた「羽の生えた祈りのような生き物」がすべての始まりでした。彼自身の言葉を借りれば、「それは特定の宗教の天使ではなく、自由で、何ものにも縛られず、ただ空を漂いながら笑っているスピリットのようなもの」。技術の巧拙や厳格なルールに縛られがちな現代社会において、子供のような純粋な遊び心を忘れないための象徴として、あの脱力したフォルムが生まれたのです。
この特異なアートセンスにいち早く着目し、カルチャーの核へと押し上げたのがSupreme(シュプリーム)でした。90年代初頭のSupremeニューヨーク1号店オープンの頃から、創業者ジェームス・ジェビアはマークの才能に心酔。店舗の壁面に巨大なアートを描かせ、渋谷店やロンドン店、原宿店など世界各国の旗艦店にマーク特製の巨大スフィンクス像やオブジェを設置しました。Supremeとのコラボレーションは毎シーズン即完売を記録し、Gonzのアートはストリートヘッズにとっての聖杯となったのです。