ゼニスの内面が公式に証明された最大の転換点は、ミリス神聖国におけるエピソードです。ミリス教団に所属する「他者の心や記憶を読み取ることができる神子」とゼニスが対面した際、神子を通じてゼニスの真意がルーデウスたちへ通訳されました。
そこで明かされた彼女の思考は、周囲の想像を遥かに超えて澄み渡り、深い愛情に満ちたものでした。夫パウロが自分を救うために命を落としたことをゼニスは救出の瞬間から正確に把握しており、計り知れない悲しみを抱えながらも、自らを責め続ける息子ルーデウスを何よりも気遣っていたのです。
「私の自慢の息子」「助けてくれてありがとう」――神子の口から語られたゼニスの本心は、前世から引きずっていた劣等感や、母を救えど救い切れなかったという後悔に苛まれていたルーデウスの魂を決定的に救済しました。彼女は何も言えなかったのではなく、言葉という不完全な器を超えた場所で、家族の幸福を誰よりも強く願い続けていました。