シニア期に差し掛かった愛犬が、立ち上がる際や排泄時にプルプルと脚を震わせている場合、その大半は老犬の後ろ足が震える理由として頻度の高い「運動器系の衰え」または「慢性痛」に起因します。
もっとも一般的な要因は、後肢の大腿四頭筋や臀筋群の筋力低下(サルコペニア)です。体重を支えるだけの筋力が不足し、踏ん張りが効かなくなることで小刻みな筋痙攣を起こします。しかし、単なる加齢現象として放置してはなりません。現場の整形外科領域では、変形性関節症(OA)や膝蓋骨脱臼(パテラ)、股関節形成不全が悪化し、関節軟骨の摩耗による激痛から足を踏ん張れずに震えている症例が極めて多く診られます。
さらに警戒すべきは神経変性疾患です。シニア犬に多い変性性脊髄症(DM)や腰仙椎部狭窄症(馬尾症候群)では、脊髄神経の伝達障害によって後ろ足の麻痺が徐々に進行します。「爪先を引きずって歩く」「歩行時に後ろ足が交差する」「ナックリング(足の甲を下にして立つ)」といった兆候が震えに伴っている場合、神経内科に強い獣医師の診断を受け、適切な疼痛管理やリハビリプログラムを開始することがQOL(生活の質)維持の鍵となります。