永作博美のビジュアルに関する検索ボリュームが跳ね上がり、「老けた」というワードがSNSのトレンドを騒がせる決定的な契機となったのが、2022年後期に放送されたNHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』でした。彼女が演じたのは、東大阪の町工場を必死に支え、ヒロイン・舞を育てる母親・岩倉めぐみ役です。
画面に映し出された彼女の頭髪には目立つ白髪が散見され、目元や口元には日々の過酷な労働と心労を物語るシワが刻まれていました。ベースメイクも極限まで薄く抑えられた、ほぼ「すっぴん」に近い質感。この姿を目にした視聴者からは、一時騒然とした反応が巻き起こりました。「あの永作博美がここまで激変するなんて」「何かの病気ではないか」と心配する声まで上がったほどです。
しかし、ドラマ制作関係者への取材や当時の制作発表資料を紐解くと、このビジュアルこそが演出意図を汲み尽くした計算され尽くした役作りであったことが判明しています。永作博美自身、雑誌インタビューなどで「町工場で粉骨砕身働くお母さんが、毎月こまめに白髪染めをして完璧なメイクをしているはずがない」という趣旨のリアリズムを語っており、あえて自毛のグレイヘアを活かし、疲労感すらも陰影としてメイクで強調していたのです。虚飾を捨て去り、役柄の生活感そのものを肉体に宿らせたプロフェッショナリズムこそが、誤解を生むほどのインパクトをもたらしました。