松前漬けの食感を決定づけるのが、素材ごとの丁寧な下処理です。ここを疎かにすると、水っぽくなったり生臭さが残ったりしてしまいます。
1. 数の子の塩抜きのコツ(浸透圧を利用した「呼び塩」)
塩数の子を真水に漬けると、浸透圧の差で細胞が破壊され、苦味(にがり成分)が身に残ってしまいます。失敗しない鉄則は1%濃度の食塩水(水1リットルに対して塩小さじ2弱・10g)に浸す「呼び塩」です。
約6時間〜8時間ごとに塩水を2〜3回取り替え、合計18〜24時間かけてゆっくり塩を抜きます。端を少しちぎって味見をし、かすかに塩気が残る程度で引き上げます。その後、表面の薄い白膜(薄皮)を指の腹で優しく撫でるように丁寧に取り除き、ペーパータオルで水気を徹底的に拭き取ってから一口大に手で割ります。包丁で切るよりも手で割るほうが、断面にタレがよく絡みます。
2. スルメの切り方と扱い
乾物のスルメイカを丸ごと使う場合、胴体を横半分に切り、繊維を断ち切るように幅1〜2ミリの極細切りにします。ゲソ(足)やエンペラ(耳)も細かく刻んで加えると、部位ごとの異なる食感と濃厚な出汁が加わります。ハサミを使うと滑らず均一にカットできます。
3. 人参の千切り下ごしらえ
人参はスルメや昆布の長さに合わせ、長さ4〜5cm、太さ1〜2ミリのマッチ棒状に千切りにします。切った人参は塩もみせず、ペーパータオルの上に広げて30分ほど表面の余分な水分を自然乾燥させます。余計な水分を飛ばすことで、タレが薄まらず、ポリポリとした小気味よい歯ごたえが生まれます。