極地に関する話題で最も頻繁に見られるネット上の混同が、「ホッキョクグマとペンギンは同じ氷の上に共存しているのか」という誤解と、「北極の氷が溶けると海面が激しく上昇する」という科学的勘違いです。
まず、ホッキョクグマとペンギンの生態違いは生息地域において完全に二分されています。「北極にペンギンはおらず、南極にシロクマ(ホッキョクグマ)はいない」というのが絶対の地理的境界です。生態学的に見ると、ホッキョクグマはユーラシア大陸や北アメリカ大陸の陸上哺乳類(ヒグマの近縁)が北極海の海氷生態系に適応進化した頂点捕食者であり、海氷の上を移動しながらアザラシを捕食します。南半球の大陸とは海で隔絶されているため、自力で南極へ渡ることはできません。
一方のペンギンは南半球で進化した飛べない海鳥であり、南極大陸周辺の海域に豊かなオキアミや魚類を求めて生息しています。もし南極にホッキョクグマが放たれれば、陸上の天敵を知らず警戒心を持たないペンギンたちは瞬く間に壊滅的な打撃を受けるとされています。
もう一つの決定的な盲点が、海氷融解と海面上昇の関係です。近年、気象報道で頻繁に取り上げられる北極海氷面積の現在と経緯を見ると、地球温暖化の影響により夏季の海氷面積は1980年代以降、10年あたり12%を超えるペースで急減しています。しかし、「北極の海氷が全て溶けても、地球の海面水位はほとんど上昇しない」という物理法則は見落とされがちです。
北極の氷は水に浮いている海氷であるため、アルキメデスの原理により、融解しても体積変化によって水位を押し上げることは基本的にありません(コップの氷が溶けても水面が変わらないのと同一)。真に地球規模の海面上昇(最大約58メートルの上昇危機)をもたらす脅威は、陸地の上に鎮座している「南極の氷床」およびグリーンランドの氷床が溶けて海へ流出することです。同じ「極地の氷」であっても、地球環境に与える物理的意味は全く異なります。