『はだしのゲン』の実写版がこれほどの名作でありながら、一度も地上波で再放送されていないことに対して、疑問を抱く声は少なくありません。その背景には、主に3つの要因が存在します。
第一の理由は、妥協を排したリアルすぎる被爆・原爆シーンの描写です。ドラマでは最新のCG技術と特殊メイクを駆使し、閃光とともに崩壊する広島の街、全身の皮膚が焼けただれて彷徨う人々、黒焦げになった遺体、火災旋風に巻き込まれる市民など、地獄絵図となった被爆直後の惨状を生々しく映像化しました。その真に迫る映像は「子供の頃に見てトラウマになった」と言われるほどの衝撃度を持ち、現在の地上波テレビにおける放送倫理基準や視聴者への配慮規定(過度な残酷描写への自主規制)に照らし合わせると、ゴールデン帯での再放送が極めて困難な水準に達しています。
第二に、権利関係と出演者の状況変化です。子役として出演していた主要キャストの芸能界引退をはじめ、当時の制作に関わった関係者や劇中使用曲の著作権処理など、15年以上前の特別番組を再許諾するためのハードルが年々高くなっています。
第三に、原作をめぐる社会的な議論の影響です。『はだしのゲン』というコンテンツ自体が、学校図書館での閲覧制限問題など教育現場や行政で議論の対象となった時期があり、放送局側が慎重な姿勢を取らざるを得ない背景も指摘されています。