客観的な給与データをもとに検証すると、手取り35万円は勝ち組かという問いに対する統計上の答えは「明確に上位層」です。国税庁が公表している「民間給与実態統計調査」の最新動向を分析すると、日本国内の給与所得者の平均年収は約460万円前後。手取り35万円をボーナス込みの年収換算(約650万〜700万円)で照らし合わせると、全給与所得者の中で上位15%〜20%以内に位置します。
それにもかかわらず、世間の評価が「勝ち組」と「困窮感」に二分される最大の理由は、家族構成によって手取り35万円の生活レベルが完全に別次元へと分岐するためです。
都内の大手SIerに勤務する32歳独身男性は、取材に対して次のように語っています。
「家賃11万円の目黒区内のマンションに住み、週に2〜3回は同僚や友人と外食。趣味のロードバイクや旅行にも惜しみなく使っていますが、自動積立投信で毎月8万円は貯金に回せています。金銭的なストレスはほぼ皆無です」
一方、地方都市でメーカーに勤務し、妻と幼児2人を養う36歳男性の手記には、悲痛な叫びが綴られています。
「手取り35万円と聞くと周囲からは羨ましがられます。しかし、住宅ローンで11万円、ミニバンのローンと維持費で4万円、食費とオムツ代で8万円。光熱費や保険料を払うと、月末の口座残高は数千円。妻が『今月も赤字かもしれない』と家計簿を見ながらため息をつく姿を見るたび、何のために深夜まで残業しているのか虚しくなります」
このように、可処分所得が全額自分に使える単身者にとっては「プチ贅沢を謳歌できる勝ち組」であるのに対し、1人の収入で家族3〜4人を支える片働き世帯にとっては「固定費の重圧に耐え続ける防戦一方の生活」へと姿を変えます。