もともとは劇作家・演出家として活動していた川口俊和が、劇団の公演のために書き下ろした舞台脚本がすべての原点だ。それが編集者の目に留まり、2015年に小説として出版されると、口コミで爆発的な広がりを見せた。劇場という密室で磨き上げられた鋭い台詞回しと、息遣いまで伝わる距離感。それらは活字になっても損なわれることがなかった。
人間は誰しも後悔を抱えて生きている。けれど、たった一行の言葉や一度の微笑みで救われることがある。著者が描き続けてきたのは、不器用ですれ違い、大切な人に素直になれなかったごく普通の人々の姿だ。その人間くささこそが、国と言語を超えた共感の源泉になっている。