体の中でも特に患者の不安を掻き立てる部位が「首(頚部)」です。首の皮膚の下にしこりを感じた場合、粉瘤や脂肪腫といった皮下組織由来のものだけでなく、頭頸部特有の解剖学的構造に起因する重大な原因を想定しなければなりません。
首のしこりの主要な原因として、まず挙げられるのがリンパ節の腫脹です。風邪、扁桃炎、虫歯などの局所的な炎症に伴い、免疫応答として耳下や顎下、頚部のリンパ節がコリコリと腫れ上がります。この反応性リンパ節炎は圧痛を伴うことが多く、感染症の治癒とともに数週間で縮小するのが一般的です。
一方、注意を要するのが「痛みを伴わず、数週間にわたって硬いまま増大し続ける頚部リンパ節」です。この場合、悪性リンパ腫などの造血器腫瘍、あるいは咽頭癌・喉頭癌・食道癌などが頚部リンパ節へ転移した病変である可能性が浮上します。
さらに、前頚部(のどぼとけの下周辺)のしこりであれば、バセドウ病や橋本病、甲状腺腫瘍といった甲状腺疾患が疑われます。唾液を飲み込んだ際にしこりが上下に動くかどうかも重要な観察ポイントです。首の病変は単なる皮膚疾患にとどまらず、全身疾患の初期兆候として現れる頻度が高いため、決して自己判断で放置してはなりません。