素麺の起源を辿ると、慶長3年(1598年)に小豆島・池田村の島民が伊勢参りの途上で奈良県三輪の里に立ち寄り、その製造技術を島へ持ち帰ったことが始まりとされています。瀬戸内特有の温暖乾燥な気候、豊かな塩田からもたらされる良質な塩、そして寒風が吹き下ろす気象条件は、素麺作りにこの上ない環境を提供しました。
その中で独自の進化を遂げ、現在まで小豆島手延素麺協同組合が厳格に守り抜いているのが、ごま油仕立ての手延べ製法です。一般的な手延べそうめんでは、麺生地を延ばす工程で乾燥や麺同士の付着を防ぐため、無味無臭に近い「綿実油」や「精製植物油」を使用します。ところが、小豆島では島内で搾油される上質な「かどや製油」などの純正ごま油を伝統的に使用し続けています。
この選択には、極めて合理的な職人の知恵が宿っています。ごま油に含まれるセサミノールなどの抗酸化物質は、麺の油脂酸化(油焼け)を強力に抑制します。さらに、天日干しの工程で瀬戸内の強烈な日光と寒風を浴びても品質が劣化せず、熟成を重ねるほどに小麦本来の旨みとグルテンの弾力を引き出す土台となるのです。茹で上がった麺が放つ淡い黄金色の艶と、噛んだ瞬間に押し返すような弾力は、このごま油仕立ての技法なしには決して生まれません。