冒頭の問いに対する結論から明かすと、「猫の手を借りたい」は慣用句です。ことわざではありません。この二つを瞬時に見分けるための最も確実な指標、それが「教訓が含まれる理由とその有無」に着目するルールです。
ことわざ(諺)とは、古くから人々の生活体験や観察に基づいて受け継がれてきた「人生の知恵、教訓、風刺、戒め」を端的に言い表した言葉を指します。たとえば「急がば回れ」「猿も木から落ちる」「情けは人のためならず」といった表現には、いずれも「だから〜しなさい」「〜という事態に油断してはならない」という人生の指針や訓戒が込められています。
対して慣用句は、二つ以上の単語が結びついて元の意味とは異なる特別な意味を表す、一種の定型フレーズです。「猫の手を借りたい」が伝えているのは、「極めて多忙で、役に立ちそうにない猫の手でもいいから助けが欲しいほどの状態」という感情や状況の描写に過ぎません。そこに「だから効率よく段取りを組め」といった処世の教えや人生の道徳は存在しないのです。つまり、慣用句とことわざの見分け方の第一関門は、「説教や人生の教訓が含まれているか、それとも単なる状況・心理の描写か」をチェックすることにあります。