卓球界におけるチキータとは、相手が台の内側に落としてきた短いボールに対し、バックハンドで強い横回転(サイドスピン)と前進回転(トップスピン)を同時にかけて攻め込む打法を指します。英語圏ではその曲がりくねる軌道から「バナナフリック(Banana Flick)」と呼ばれることも一般的です。
このユニークなチキータ名前の由来には、卓球の歴史を彩るユニークなエピソードが存在します。生みの親は、チェコの名手であるペテル・コルベル選手です。1990年代前半、コルベル選手が練習中に編み出した「手首を深く巻き込んで横回転をかけながら持ち上げる」という奇妙なレシーブを目の当たりにした当時のチェコ代表監督やチームメイトが、黄色く曲がったバナナを連想し、当時世界的に有名だったアメリカのバナナブランド「Chiquita(チキータ)」に例えて「まるでチキータバナナのような曲がり方だ」と呼んだことが発端とされています。
それまでの卓球界における常識は、「ネット際に落とされた短い下回転サーブは、ツッツキで突っつくか、ストップで短く止める」という守備的対応がセオリーでした。フラットに弾く従来の卓球バックハンドフリックでは、強い下回転がかかった低く短いボールを持ち上げる際にネットミスを起こすリスクが極めて高かったからです。しかし、コルベル選手が開発したこの打法は、下回転の球威を逃がしながら激しくカーブして相手コートに沈むため、世界のトップ選手たちに強烈な衝撃を与えました。