黒死牟を単なる冷酷な悪役から「どこか愛おしい存在」へと押し上げた最大の要因は、双子の弟に対する常軌を逸したコンプレックスだ。数百年にわたり生き永らえ、武を極め、鬼の頂に登り詰めたはずの巨魁が、胸中では幼少期に生き別れた弟の幻影に囚われ続けている。この落差が凄まじい。
鬼舞辻無惨の配下として圧倒的な威圧感を放ち、後輩の鬼たちに理不尽なまでの実力差を叩きつけていた男が、弟の話題になった瞬間だけ妙に頑なになり、動揺を隠せない。最強の怪物が剥き出しにする不器用な感情の振れ幅。ファンがそこに一種の「ギャップ萌え」を見出すのは、ある意味で必然だった。
威厳を保とうと背筋を伸ばす姿と、捨てきれない執着の間で揺れ動く様は、どこか滑稽ですらある。恐ろしくも憎めない、情けなくも美しい。この絶妙なアンバランスさこそが、熱狂的な共感と親愛の眼差しを集めている理由だ。