今日でこそ高級料理としてのイメージが先行する日本料理・江戸前寿司だが、文化文政期の江戸において寿司は屋台で素早く立ち食いするファストフードだった。とりわけ稲荷と海苔巻きは、生魚のように傷む心配が少なく、手づかみで手軽に食べられる携帯食として重宝された歴史がある。
長い上演時間にわたって芝居を楽しむ江戸歌舞伎の劇場において、幕間に素早く腹を満たせる折り詰め弁当の需要は極めて高かった。魚を使わずに満足感が得られ、手が汚れにくく、さらに芝居の演目にちなんだ名前が付いている。助六寿司は、劇場の幕間弁当(幕の内)の最適解として都市生活者に定着していったのだ。