「自衛隊の旭日旗」と一口に言っても、海上自衛隊と陸上自衛隊では用いられている意匠が明確に異なります。双方の違いと、旭日文様が持つ本来の文化史的意味を整理します。
海上自衛隊の自衛艦旗は、日章(太陽)が旗の中心からやや左(旗竿側)に寄り、16本の赤い光条が放射状に広がる「十六条旭日旗」です。これは1889年(明治22年)に旧帝国海軍の軍艦旗として制定された意匠をそのまま継承したものです。1954年の海上自衛隊発足に際し、保安庁内で複数の新デザイン案が検討されたものの、「海軍旗としての伝統と機能美を兼ね備え、国際的にも広く知られている」という理由から、閣議決定を経て再採用されました。
一方、陸上自衛隊が使用する「自衛隊旗(連隊旗)」は、日章が中央に位置し、光条が8本に抑えられた「八条旭日旗」です。旗の外周には金色の八重旗(縁取り)が施されており、旧帝国陸軍の連隊旗(十六条旭日旗)とは異なる独自の意匠として1954年に制定されました。
旭日模様そのものの起源は、明治期の軍隊創設よりも遥か古くから日本列島に息づいていました。古来、太陽が昇る様を描いた旭日文様は「日出づる国」の象徴であり、豊漁祈願の大漁旗、出産・節句の祝い旗、神社の祭礼、浮世絵などに幅広く使われてきた慶事・吉祥の伝統デザインです。軍事組織の専売特許ではなく、日本文化に深く根ざした祝意と生命力の象徴であった歴史的事実が存在します。