一般市民からすれば「なぜあのような大音量で街中を威嚇しているのに、警察はすぐに逮捕しないのか」という疑問が生じるのは当然です。これには、日本国憲法が保障する基本的人権と、現行法制度の明確な手続き基準が深く関係しています。
最大の理由は、日本国憲法第21条に定められた「表現の自由」「集会・結社の自由」です。政治的な主張を街頭で訴える行為そのものは民主主義国家において最大限に尊重されるべき権利であり、警察が思想信条の内容を理由に活動を一律禁止することは法的に許されていません。したがって、警察は「思想」ではなく「具体的な違法行為(道交法違反や騒音など)」に対してのみ取り締まりを行います。
大音量に対しては、各都道府県が制定している「拡声機暴騒音規制条例(暴騒音規制条例)」が適用されます。例えば東京都の場合、街宣車から発せられる音が規定の距離において基準値(商業地域で85デシベル等)を超えている場合、警察官がその場で「音量を下げるように」と警告を発します。
この警察官の警告に従わずに違反を継続した場合に初めて条例違反として検挙・摘発が可能となる「警告前置主義」が採られているため、現場では警告と音量低下のいたちごっこが繰り広げられる実情があります。ただし、特定の個人や企業に対して名誉毀損や強要、建造物侵入、あるいは道路交通法上の危険運転が確認された場合は、公安担当捜査員(警視庁公安部や各県警警備部)によって現行犯逮捕を含めた厳正な対処が行われます。