「赤ちゃんのためにタンパク質をたくさん摂らなければならない」という焦燥感が、過剰摂取の引き金になります。厚生労働省が公表している「日本人の食事摂取基準」において、成人と各妊娠ステージにおける推奨量を正しく把握することが不可欠です。下記のデータ比較表は、厚生労働省基準と市販プロテイン1食分の含有量、および臨床現場での判断基準を整理したものです。
データが物語る通り、厚生労働省が定める妊娠中のタンパク質必要量厚生労働省基準において、妊娠初期の推奨付加量は「0g」です。胎児の器官形成期である初期に、プロテインを飲まないと栄養が足りないということは生化学的にあり得ません。後期であっても付加量はプラス25gであり、これは手のひらサイズの鮭の切り身1切れ(タンパク質約20g)で大半を賄える数値です。
また、母体管理において注視すべきが妊娠高血圧症候群とタンパク質摂取の相関関係です。かつての産科医療では一律のタンパク制限が議論された時代もありましたが、現在の周産期医療では「適正なタンパク質摂取」が血管内皮細胞の機能維持と循環血液量の保全に不可欠であると位置付けられています。しかし、ここで求められるのは食材からビタミンB群や鉄分、亜鉛などとともにバランスよく摂取される複合タンパク質です。サプリメントから単一のアミノ酸濃縮物を急激に摂取することは、母体の電解質バランスを乱し、むくみや尿タンパク陽性を誘発する契機になりかねません。