加湿器における衛生トラブルは、単に使用者の怠惰によるものではない。本体の加湿構造そのものに潜む「微生物の繁殖条件」が引き金となっている。
厚生労働省のレジオネラ症防止指針や衛生微生物研究センターの報告でも指摘されている通り、常温の水を振動させて微粒子として飛ばす超音波式加湿器は、タンク内の水温が室温程度に保たれるため、黄色ブドウ球菌やレジオネラ属菌、カビ類にとって格好の温床になりやすい。除菌ユニットを搭載していても、超音波振動子の周りにバイオフィルム(ぬめり)が発生すれば、有害菌をそのまま室内に飛散させるリスクを孕んでいる。
一方、ファンで風を当てて自然蒸発させる気化式加湿器は、熱を使わないため省エネ性能に優れる反面、常に濡れた状態が続く気化フィルターに雑菌やカビが付着しやすい宿命を抱える。トレイ内に溜まった水が酸化・腐敗し、わずか数日放置しただけで生乾き臭やピンク色の酵母菌(ロドトルラ)が繁殖する事例が頻発していた。
これに対し、スチーム式加湿器が「カビない」と評される真相は極めて明快だ。水をヒーターで100℃まで加熱して沸騰させ、その蒸気によって加湿を行うため、射出される蒸気自体が無菌状態に保たれる。貯水容器内が高温に保たれる環境下では、カビの胞子や雑菌が生息・増殖することは生物学的に不可能に近い。衛生管理に神経を尖らせる病院の病室や保育現場でスチーム式が優先配備されるのは、この圧倒的な殺菌能力が証明されているからにほかならない。