1979年に『8時だョ!全員集合』の前半コントから生まれた「ヒゲダンス」。加藤茶さんと志村けんさんが黒のタキシードに身を包み、付けヒゲをつけて無言でコミカルな芸(フルーツ刺しやバケツ回しなど)に挑むこのコーナーは、最高視聴率50.5%を記録した国民的番組の中でも屈指の人気を誇りました。
あの特徴的な「ズンズンズン…」と響くミニマルなベースラインのBGM、実はアメリカの名門フィリー・ソウルの代表的シンガー、テディ・ペンダーグラス(Teddy Pendergrass)が1979年に発表した名曲『Do Me』が元ネタです。
当時、コントで使う音楽に納得がいっていなかった志村さんは、自身の私物レコードの中から『Do Me』をTBSの音楽担当であった作曲家・たかしまあきひこ氏の元へ持参。「この曲のイントロのベースラインを使って、コントのBGMを作ってほしい」と直談判したと伝えられています。たかしま氏はこの骨太なファンクベースを抜き出し、ブラスセクションと親しみやすいリフを加えて、誰もが口ずさめる「ヒゲのテーマ」を完成させました。
当時のお茶の間の子どもたちは、それがニューヨークやフィラデルフィアの最先端ディスコで流れるブラックミュージックの派生だとは知らず、無意識のうちに本物のソウルグルーヴに合わせてステップを踏んでいたことになります。この先見性と音楽センスこそ、志村けんという表現者の真骨頂でした。