「体重を3キロ落としたのに、顎下だけがびくともしない」という悩みを抱える人は少なくありません。顎の下の肉が痩せない理由の根底にあるのは、皮下脂肪の量ではなく「組織を支えるハンモック構造の崩壊」です。顎下には、下顎骨から喉仏の上部にある「舌骨」をつなぐ筋群(舌骨上筋群・舌骨下筋群)が存在し、その表層を広頚筋(こうけいきん)と呼ばれる膜状の筋肉が首全体を包み込むように覆っています。
まず確認すべきは、顎の肉がつまめる理由の鑑別です。下を向いた状態で親指と人差し指で顎下の皮膚をつまんだ際、つまめる厚みが2cm以上あれば皮下脂肪の蓄積が疑われます。しかし、厚みが1cm程度あるいは皮膜のような薄さであるにもかかわらず二重顎になる場合、原因は脂肪ではなく顎下のたるみの決定的な原因である筋膜の弛緩と支持組織の機能不全にあります。
特に見落とされがちなのが「低位舌(ていいぜつ)」と呼ばれる状態です。本来、舌の先端と胴体は上あご(口蓋)にぴったりと吸着しているのが正常な安静時ポジションですが、口呼吸や咀嚼回数の減少により舌が下顎に落ち込んでいる人が全体の6割を超えていると歯科解剖学の臨床現場で指摘されています。舌の重みは成人で約200〜300gあり、これが下方へ沈下することで、連動するオトガイ舌骨筋が顎下の皮膚と脂肪組織を物理的に押し下げてしまうのです。