着付けの解説記事ではあまり語られないものの、現場で極めて頻繁に見られる「三大盲点」について触れておきます。
- ポケットがないことによる収納崩れ:浴衣には洋服のようなポケットがありません。「袂(たもと=袖の袋状の部分)」に重いスマートフォンや長財布を無造作に入れる男性が散見されますが、これは厳禁です。重みで片方の袖だけがだらしなく垂れ下がり、衿元が引っ張られて一瞬で着崩れます。小物は必ず小さな信玄袋にまとめるか、薄型のカード入れ程度を帯の内側にそっと差し込むのがルールです。
- 「腕を真上に上げる」動作の罠:花火大会の屋台などで、頭上高く吊るされた短冊やメニューを指差そうと腕を垂直に上げると、身八つ口(脇の縫い目)から身頃が一気に引っ張られ、胸元がはだけます。何かを取る際や手を挙げる際は、「もう片方の手で反対の袖口を軽く押さえ、肘を曲げながら前方に手を伸ばす」のが和装の所作です。
- 歩行時の裾のめくれ対策:大股で早歩きをすると、上前の裾が風をはらんでめくれ、太ももまで露出してしまう事故が起きます。これを防ぐには、上前(外側の布)の褄(つま=裾の角)を帯を締める前に2〜3cmほど引き上げておき、下前(内側の布)をやや深めに巻き込んでおくことで、足さばきが格段に軽快になります。