製作を手掛けたワーナー・ブラザースにとっても、このシリーズがもたらしたパラダイムシフトは絶大だった。従来のハリウッド映画産業において、コミック原作映画のサイドキックは「若年層向けの賑やかし」や「玩具を売るための商業的アイコン」として扱われる傾向が強かった。
ノーランはその安易な商業主義を退け、相棒という存在に「思想の継承者」という極めてシリアスな役割を与えた。この英断は、その後の映画界全体におけるキャラクター描写のハードルを一気に引き上げることになる。コミックの記号を現実の人間ドラマへと昇華させる手腕は、映画ビジネスにおけるアメコミ翻案のあり方を永遠に変えてしまった。