加熱する報道狂騒曲の真っ只中、沈黙を守る佐村河内氏の自宅にカメラを持ち込んだ人物がいる。数々の社会派作品で知られる映画監督の森達也氏だ。彼が監督を務めたドキュメンタリー 映画『FAKE』は、メディアが作り上げた「悪人」のフレームワークを内側から崩壊させる異色作となった。
カメラは、メディアの過激なスクープ合戦から遮断された自室で、妻と共に静かに暮らす彼の日常を映し出す。そこには、報道で悪魔化された人物とは異なる、困惑し傷ついた一人の人間の姿があった。映画は「誰が本当のことを言っているのか」「真実とは何か」という問いを視聴者に突きつけ、報道の暴走と大衆の集団心理の危うさを鮮やかに炙り出した。