和彫りの図案は、中国の故事成語、神道・仏教の教義、歌舞伎や浮世絵の武者絵などに端を発しています。それぞれのモチーフが持つ象徴性を理解することは、自身が背負うデザインを決定づける第一歩です。
札幌の老舗スタジオ「刺青 タトゥースタジオ TATTOO 初代彫雄」をはじめとする伝統派の作品群を見ても、古くから選ばれ続ける図案には揺るぎない理由が存在します。
【龍(りゅう)の持つ意味】
東洋において龍は水を司る神聖な霊獣であり、天候を操り災厄を払う守護神とされてきました。天に向かって昇る「昇竜」は立身出世や運気の上昇を、地を見下ろす「降竜」は守護や蓄財の祈りを意味します。五爪・三爪の違いや、如意宝珠を握る構図など、細部によっても込められる願いが異なります。
【鯉(こい)と登竜門の伝説】
中国の黄河上流にある急流「竜門」を登り切った鯉が龍へと変貌したという「登竜門」の故事に由来します。このことから、鯉の図柄は「艱難辛苦を乗り越えた先の大願成就」「立身出世」「不屈の忍耐力」を象徴します。激流を泳ぎ切る赤や黒の緋鯉・真鯉のほか、龍になりかける姿を描く「化龍(かりょう)」も人気の高い絵柄です。
【般若(はんにゃ)の驚くべき由来】
般若の面は、能楽において「強い嫉妬や怨霊によって鬼と化した女性の顔」を表したものです。しかし、刺青の世界における般若は単なる恐怖の象徴ではありません。元来「般若」とは仏教用語で「仏の最高の智慧」を指します。激情を鎮め、内なる邪心や外からの災厄を退散させる「強力な魔除け・厄除け」の守護符として選ばれ続けています。
そのほか、百獣の王と百花の王の調和を表す「唐獅子牡丹」、強靭な生命力を象徴する「虎」、再生と脱皮から不老長寿・金運をもたらすとされる「蛇」など、動植物と神仏の組み合わせ一つひとつに重厚な物語が宿っています。