多くのドライバーが最も気にかけている疑問が、「道を譲ってもらった際にお礼として点滅させるサンキューハザードは違反なのか」という点です。結論から言えば、「サンキューハザードという行為そのものを直接処罰する個別の罰則規定」は道路交通法上に存在しません。警察がサンキューハザードだけを理由に青切符を切るケースは極めて稀です。
しかし、だからといって完全に無害かつ合法とは言い切れません。交通安全指導員や各都道府県警の広報課が注意を促す背景には、次のような法規違反や重大事故につながる現実的なリスクが存在します。
第一のリスクが、道路交通法第53条に規定される「合図不履行違反」との兼ね合いです。車線変更や合流を行う際、ドライバーは変更が完了するまで方向指示器(ウインカー)を出し続けなければなりません。ところが、譲られたことに気を取られ、ウインカーを消して慌ててサンキューハザードのスイッチに手を伸ばしてしまうケースが散見されます。進路変更の合図が不十分なままハザードを点滅させると、本来出すべき合図を怠ったとみなされ、普通車の場合「反則金6,000円・基礎点数1点」の処分を受ける可能性があります。
第二のリスクは、後続車による「意味の取り違え」です。ハザードランプの基本機能は「非常停止の合図」です。合流直後にハザードが点滅した瞬間、後続車のドライバーが「前車が急ブレーキを踏んだのか」「前方に障害物があるのか」と誤認して急制動をかけ、玉突き事故を引き起こす危険性があります。JAF(日本自動車連盟)なども「感謝を伝える気持ちは大切だが、ハザードランプ本来の目的外使用は推奨しない」という見解を公表しており、過信は禁物です。