表題曲「バーク・アット・ザ・ムーン」の歌詞の世界観は、1930〜40年代のクラシック・ホラー映画、とりわけ名作『狼男(The Wolf Man)』の神話構造をベースに構築されています。当時のアメリカ社会では、ティッパー・ゴア率いるPMRC(全米家庭医学会)などを中心に、ヘヴィメタルの歌詞が悪魔崇拝や青少年の非行を助長しているという激しいバッシングが吹き荒れていました。「月に吠える」の詩世界は、そうした世間の糾弾を逆手に取ったブラックユーモアとアイロニーに満ちています。
楽曲の和訳における重要なポイントは、単なるモンスターパニックではなく、「かつて村人たちによって葬り去られた怪物が、満月の夜に復讐のために蘇る」という復讐と再生のプロットです。かつてブラック・サバスを解雇され、業界から見放されながらもシーンの怪物として蘇ったオジー自身の境遇が見事に重ね合わされています。
「かつて地上を恐怖に陥れた怪物は、一度は滅ぼされたかに見えた。だが呪われし運命の夜、静寂を破り、奴はふたたび月に吠える」という筋立ては、過激なヴィジュアルショックを求めていた当時の若者層の心を鷲掴みにしました。プロモーションビデオでは、特殊メイクを施したオジーが狂気の科学者と狼男の二役を熱演。MTV黎明期のヘビーローテーションの後押しを受け、楽曲は瞬く間に世界的なアンセムへと昇華していきました。