介護現場やSNS、当事者コミュニティを定点観測すると、介護者が直面する苦悩は想像を絶する水準に達しています。厚生労働省の調査データや関連学会の報告によると、在宅介護を断念して施設入所を決断する理由の第1位・2位には、常に「排泄トラブル」と並んで「暴言・暴力・夜間不穏などの認知症BPSD周辺症状」が挙げられています。
大手コミュニティサイトや介護専用掲示板には、夜ごと以下のような痛切な書き込みが寄せられています。
「実の母親に『ご飯をまだ食べていない!私を餓死させる気か!人殺し!』と近所に響き渡る大声で罵倒された。泣きながら作った食事を床に叩きつけられた瞬間、心が完全にポキリと折れました」(50代・在宅介護中の長女)
「父親に殴られそうになり、思わず腕を掴んで制止したら『暴行された』と警察を呼ばれた。警察官に事情を説明しながら、情けなさと悔しさで涙が止まらなかった」(40代・同居介護中の長男)
かつて尊敬していた親や、優しかった配偶者から浴びせられる容赦ない言葉の刃は、介護者の精神を根底から蝕みます。取材で出会ったベテランのケアマネジャーは次のように語ります。「暴言を吐く高齢者の多くは、夕暮れ時や入浴介助、着替えのタイミングで怒りを爆発させます。共通しているのは、『急かされたとき』と『自分のプライドを傷つけられたと感じたとき』です。家族だからこそ、遠慮のない甘えが攻撃性となって噴き出してしまう残酷な一面があります」。