なぜ人々は厳しいルールに身を置きながらも、BAR MARTHAを目指すのでしょうか。その理由は、一歩足を踏み入れれば肌で理解できる圧倒的な音響空間にあります。
店内の心臓部には、オーディオマニア垂涎のヴィンテージ機材が並びます。英国の歴史的名機であるGarrard(ガラード)301ターンテーブル、オルトフォンのカートリッジ、真空管アンプの銘品群、そして巨大なタンノイ(Tannoy)やJBLのカスタムスピーカーコンポーネントが、息を呑むような空気感を醸成しています。現代のデジタル音源が持つ平面的で硬質な音とは対照的に、レコードの溝から拾い上げられる音波は驚くほど肉厚で、シンバルの余韻やウッドベースの弦が擦れる生々しい摩擦音までをも完璧に描き出します。
棚にストックされた数万枚におよぶアナログレコードは、1960年代から70年代を中心としたロック、ソウル、ブルース、ファンク、ジャズの名盤揃いです。リクエストを受け付けるスタイルではなく、店主や選曲スタッフが店内の熱気や夜の深まりに合わせて針を落とすレコードを選定します。
もちろん、バーとしての基本であるお酒のクオリティも妥協がありません。氷柱から手作業で切り出された無垢のロックアイス、磨き抜かれたバカラやうすはりのグラスで提供されるシングルモルトウイスキーやクラシックカクテルは絶品です。特にきめ細やかな炭酸とウイスキーの芳醇なアロマが弾けるハイボールは、大音量のグルーヴと喉越しがシンクロする極上の体験をもたらしてくれます。