我が子の将来の背丈を知る上で、世界中の小児科医がスクリーニングの第1歩として活用しているのがターゲットハイト計算です。これは父親と母親の身長をベースに、男女別の体格差を補正して算出する統計的な予測式です。
計算式は極めてシンプルです。
- 男子の予測身長(cm)=(父親の身長 + 母親の身長 + 13)÷ 2
- 女子の予測身長(cm)=(父親の身長 + 母親の身長 − 13)÷ 2
男子における「+13」、女子における「-13」は、日本人成人の男女平均身長差である約13cmを反映した補正値です。過去には統計的な回帰分析を組み合わせたカミナス式計算なども広く用いられてきましたが、現在でも臨床現場で直感的な指標として多用されているのはこのターゲットハイトです。
ここで保護者が最も誤解しやすいのが「子供の身長遺伝の割合」です。双子研究やゲノムワイド関連解析(GWAS)の大規模調査によると、成人身長における遺伝率はおよそ70〜80%と報告されています。この数字だけを見ると「結局は遺伝で運命が決まっている」と感じるかもしれません。
しかし、小児内分泌専門医は「ターゲットハイトには統計上±9cm程度の予測幅(正規分布の約80%が含まれる範囲)が存在する」と強調します。たとえば計算上の予測値が170cmだった場合、実際の最終身長は161cmから179cmまでの広がりを持ち得ます。遺伝的素因は確かに強固な設計図ですが、その設計図のポテンシャルを上限まで引き出すか下限で終わらせるかは、成長期における栄養、睡眠、運動、そして思春期の訪れるタイミングなどの環境因子に委ねられています。