カフェ香咲の名が全国のお茶の間に深く浸透した契機の一つが、人気テレビドラマ『孤独のグルメ Season4』(第9話)への登場でした。主人公の井之頭五郎が神宮前の路地裏を歩き、ふらりと立ち寄った店内でホットケーキとブレンドコーヒーに舌鼓を打つシーンは、多くの視聴者の記憶に鮮烈な印象を残しました。
しかし、ドラマの舞台となるはるか以前、1984年の創業時から同店は文化人やクリエイター、近隣の住民に愛される隠れ家でした。店主が長年かけて収集したアンティークの調度品、壁に掛けられたクラシックな振り子時計、温かな陰影を落とすランプシェードなど、店内のあらゆる要素が心地よい時間の流れを演出しています。
神宮前・青山エリアは、日本屈指のファッショントレンド発信地として激しい新陳代謝を繰り返してきました。数多くのカフェが生まれては消えていく街において、40年以上にわたり変わらぬ佇まいを守り続けているという事実そのものが、訪れる者に日常から切り離された安心感を与えています。単なる飲食店にとどまらず、街の記憶を宿した文化遺産としての側面が、愛好家たちの敬意を集める背景にあります。