わら家を訪れたすべての人が息を呑む瞬間、それが特注の大きな木樽(たらい)に浮かぶ熱々の麺と、ずっしりと重い陶器の「だし徳利」が運ばれてくる場面です。湯気をもうもうと立ち上らせる「たらいうどん」は、茹で上げた麺を水で締めずに釜湯ごと直にたらいへ移す釜揚げスタイル。麺表面の微細な凹凸に出汁が絶妙に絡みつきます。
そして、わら家最大のアイコンとも呼べるのが、首元に麻紐が巻かれた巨大なだし徳利です。保温性に優れた特製の焼き物に並々と注がれた出汁は、火傷しそうなほど熱々の状態を保っています。この徳利を持ち上げ、自分の猪口へと注ぎ込む所作そのものが、五感を刺激する至高の食体験となります。
出汁のベースとなるのは、瀬戸内海の最高級伊吹島産いりこ(煮干し)、利尻昆布、厳選された削り節。ひと口すすると、雑味のない上品ないりこの風味が鼻腔を抜け、奥深いコクがじんわりと広がります。卓上に用意された青ねぎ、すりおろし生姜、すりごまをお好みで加えれば、濃厚な出汁と爽やかな薬味のコントラストで、何玉でも食べ進められてしまう魔力を持っています。