激痛と下痢に襲われた際、インターネット上の不確かな知恵を信じて誤った対処を行い、かえって病状を悪化させる事例が後を絶ちません。現場の医療従事者が警鐘を鳴らす、3つの代表的な誤解を是正します。
誤解1:痛みを止めるために市販の「強力な下痢止め」を即座に飲む
外出先や仕事中だからといって、ロペラミド塩酸塩などの腸管運動を強力に止める市販薬を独断で飲む行為は極めて危険です。原因が病原性大腸菌やカンピロバクター、サルモネラなどの細菌、あるいはノロウイルスだった場合、下痢を無理に止めることで腸管内に病原菌や産生毒素が長期間停滞します。毒素が腸壁から吸収され、麻痺性イレウス(腸閉塞)や全身の敗血症など、命に関わる重篤な合併症を招くリスクがあります。
誤解2:脱水を防ぐために冷たい水やスポーツドリンクをガブ飲みする
下痢や冷や汗で水分が失われるため、水分補給そのものは極めて重要です。しかし、激痛の真っ只中に冷たい水や糖度の高い清涼飲料水を一度に大量摂取すると、「胃結腸反射」を誘発し、痙攣している腸をさらに激しく動かしてしまいます。水分の補給は、激しい腹痛のピークが落ち着いてから、常温の経口補水液(OS-1など)や白湯をひと口ずつ時間をかけて口に含むのが鉄則です。
誤解3:「横になったら漏れる」と我慢して便座に座り続ける
迷走神経反射が進行している際、最も恐れるべき事態は転倒による頭部強打や意識消失です。便意があるからと便座に座り続け、いきみ続けると、腹圧の上昇がさらに迷走神経を刺激し、血圧低下を助長します。「気が遠くなりそう」と感じた時点で、失禁の心配よりも生命の安全を優先し、その場に低くしゃがみ込むか横たわる判断を下さなければなりません。