一方、おすぎが切り開いた『映画批評』の世界もまた、日本の映画ジャーナリズムに決定的な変革をもたらした。権威ある映画専門誌『キネマ旬報』に代表される厳密な論評と、お茶の間の誰もが理解できる感情豊かな語り口。彼はその二つを見事に融合させた。
世界的な大ヒットを記録した『タイタニック』の愛と悲劇を熱弁し、試写室で涙を流しながら観客に劇場へ足を運ぶよう呼びかける姿は、作品の魅力を何倍にも増幅させた。同時に、古典的名作である『カサブランカ』に見られる人間の葛藤やハリウッド映画の脚本美を語る際の眼差しは、真摯そのものだった。「映画は観客の人生を豊かにするために存在する」という信念が、彼のあらゆる言葉に貫かれていたのである。